抹茶は飲用だけではなく、ケーキやクッキーなどの材料、揚げ物やサラダの隠し味としても利用されています。日本人にとって身近な存在でもある抹茶ですが、どのような歴史をたどってきたのかを知りたいという方もいるでしょう。今回は抹茶の歴史について詳しく解説します。
お茶の起源
お茶の起源には諸説ありますが、有力視されているのは紀元前2,700年ごろの中国だといわれています。古代中国の伝承には三皇五帝という帝王がおり、そのうちの1人である神農は人々に医療と農業を教えたとされています。神農は野草とお茶の木を食べていたという逸話があり、飲用ではなく薬として用いられていました。
嗜好品として飲まれるようになったのは、紀元前59年ごろといわれています。中国の前漢時代の書物には、人々が飲用としてお茶を使っていたことが書かれています。
また、お茶は中国だけでなく日本にも広まるようになりました。西暦9世紀には嵯峨天皇がお茶を飲んだことが日本後紀に記載されています。
抹茶の起源
抹茶の起源は西暦10世紀ごろだといわれています。中国の宋時代に書かれた茶録や大観茶論には、抹茶の製法や飲み方が詳しく記載されています。
日本における抹茶の起源は13世紀ごろです。臨済宗の開祖であった栄西は、修行先であった宋からさまざまなお茶の種子を持ち帰っています。喫茶養生記の中には抹茶の特徴や効能などが詳しく記されており、一般の人々にも抹茶の存在が知られるようになりました。
栄西は抹茶の製法について、さまざまなことを述べています。朝摘み取った新芽を蒸してから冷ますこと、炭火の上に敷いた紙の上に広げて乾燥させること、紙が焦げないように調整しなければならないといった大事なポイントがあると人々に教えていました。
その後抹茶の製法は、栄西から明恵上人という僧に伝わります。明恵上人は栄西と同じようにさまざまなお茶の種子を京都にある高山寺にまき、抹茶の普及に努めました。
足利義満によって広く普及する
室町時代の3代目の将軍であった足利義満は、宇治の茶園を高く評価するようになりました。さらに、宇治のお茶は伊勢や伊賀などにも伝わるようになり、お茶を飲む習慣も多くの人に広まったといわれています。以前は位の高い人だけが飲めるものでしたが、南北朝時代にはたくさんの武士たちに飲まれるようになったのです。
千利休の登場
安土桃山時代になると、千利休によってわび茶とよばれる茶の湯の様式が確立されています。千利休のわび茶は武士にも広まっており、細川三斎・蒲生氏郷・瀬田掃部・古田織部・牧村兵部・芝山監物・高山右近など、利休七哲とよばれる弟子を生み出しました。千利休は弟子を育てながらお茶の普及に努めたことがわかっています。
江戸時代から現在
江戸時代になると、お茶の製法がさらなる進化を遂げます。宇治田原湯屋谷の茶業家であった永谷宗円は、15年という年月をかけて新しいお茶の製法を確立しました。茶葉を蒸してから、揉みと乾燥を行う製法は現在でも受け継がれています。
さらに江戸時代の後期には、山本嘉兵衛により通常のお茶よりも高級感のある玉露が開発されました。現在では抹茶をはじめ、さまざまなお茶が各家庭で飲まれています。
世界へ広がる抹茶
ヨーロッパでのお茶の歴史は16世紀ごろです。オランダの探検家であったリンスホーテンが、東方案内記という書物の中で日本のお茶について紹介しています。17世紀にはお茶が輸入されるようになりましたが、中国のお茶よりも日本のお茶の方が先に伝わったとされています。
さらに2,000年代に入ると、アメリカやヨーロッパが日本の抹茶に関心を持つようになり、より多くの方に受け入れられるようになっています。さらに寿司をはじめとした和食が世界にも広まるようになり、和食と一緒に楽しむ飲み物として抹茶が認知されるようになりました。
さまざまな料理に活用される抹茶
以前は抹茶を飲用として使用するのが一般的でしたが、今では料理やデザートにも使われるようになりました。明治初期には、アイスクリームに抹茶を混ぜた抹茶アイスが開発されています。
ほかにも外郎（ういろう）やもみじ饅頭などの和菓子、カステラやクッキーなどの焼き菓子、ロールケーキなどの洋菓子にも抹茶が使われるようになりました。さらに、抹茶と塩を混ぜた抹茶塩、天ぷらの衣に抹茶を加えた料理など、隠し味やスパイスとしても使われています。
まとめ
抹茶の歴史は古く、西暦10世紀ごろには日本に伝わっていたとされています。当時は一部の人だけが飲んでいた貴重品でしたが、徐々に簡単に作れるようになり、今では多くの人が抹茶を楽しんでいます。現在ではヨーロッパやアメリカなどでも抹茶が飲まれているのです。
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